- 研究開発
- 2020.11.11
鉄鋼コイルの防錆技術
膜厚0.1~2μmの完全クロムフリーの薄膜が、亜鉛めっき鋼鈑の品質を高めます。


鉄鋼コイルの防錆技術とは
鉄鋼コイルは、鋼板をシート状に加工しコイルとして巻き取ったものです。鉄鋼コイルの防錆技術は、その用途によって処理剤の呼び方が異なります。処理後にさらに塗装されるものを塗装下地剤、そのまま使用されるものを一時防錆剤と呼びます。
①塗装下地剤
亜鉛めっきおよび合金系亜鉛めっき上に、膜厚0.1μm程度の皮膜を形成することにより、塗膜密着性と耐食性を付与します。主に、配電盤、屋根材、シャッター、ユニットバスなどの屋外家電や建材製品に使用されます。
②⼀時防錆剤(耐指紋剤)
亜鉛めっきおよび合金系亜鉛めっき表面上に、膜厚1~2μmの皮膜を形成し、最終製品に加工されるまでの白さび発生を防ぎます。また、加工作業時の指紋付着や、酸やアルカリ等の薬品による浸食を防ぎます。主に、建材や、テレビ、洗濯機、冷蔵庫、エアコンなどの家電製品に使用されます。

どのような技術か?
①塗装下地剤
無機化合物および有機樹脂が主成分であり、当社で長年培われてきた防錆剤(特殊インヒビター)と密着付与剤の配合をすることにより以下の機能を付与し、クロメートと同等性能を実現しました。
1.めっき表面へのインヒビター吸着による腐食反応の抑制(耐食性)
2.塗膜との強固な結合による加工密着性(密着性)
②⼀時防錆剤(耐指紋剤)
熱架橋型樹脂バインダーに防錆剤(特殊インヒビター)を配合することにより、以下の機能を付与し、クロメートと同等性能を実現しました。
1.めっき表面へのインヒビター吸着による腐食反応の抑制(耐食性)
2.密着性官能基によるめっきとの強固な結合(密着性)
3.皮膜緻密性アップによる腐食因子の侵入抑制(遮断性)

社会課題解決への貢献
亜鉛めっき、合金系亜鉛めっきには、その優れた耐食性と塗装密着性からクロメート処理が広く採用されてきました。厳しい耐食性が必要な製品には、現在でも使用されています。しかし、クロメート処理には、人体に有害でかつ環境に悪影響を与える6価クロムが含まれています。当社では、その代替品開発にいち早く取り組み、6価クロムおよびクロム化合物を含まない完全クロムフリー表面処理剤を取り揃えています。
鉄鋼コイルは、あらゆる金属製品に必要不可欠な材料であり、我々の生活とは切り離せない存在です。鉄鋼製品を安全に長く、かつ環境に優しく使用できる持続可能な社会実現に貢献します。