質問者:SMBC日興証券株式会社 新谷泰大氏
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A1説明資料P7に記載の通り、NIPSEA中国以外のセグメント全体として2025年通期で+5~10%の売上成長を見込んでいます。各地域でも+5~10%の売上成長を見込んでいますが、さらに高い成長も期待しています。
インドネシアでは、第1四半期、第2四半期の事業環境は厳しく、売上はほぼ前年並みとなりましたが、第3四半期、第4四半期は1桁台後半の売上成長を達成しました。第4四半期はマーケティング施策が奏功し、2025年は通年で+5~10%の売上成長は十分に可能と見込んでいます。
セグメント全体の利益率については、2つの要素が影響しています。1つ目はBetek Boyaであり、2024年の営業利益率は超インフレ会計の適用後で13.2%ですが、金融政策の変更によって景況感が良くないため、超インフレ会計の影響なども含めて慎重に見ています。2つ目はインド事業であり、2024年は2ヵ月分の連結寄与でしたが、2025年は通年寄与となります。2025年の営業利益率は2024年実績の参考値である1桁台半ば程度を見込んでいることから、セグメント全体の利益率は若干低下する見通しです。
カザフスタンは順調にキャッシュを創出しており、マレーシアグループやシンガポールグループも引き続き成長しています。シンガポールは既に市場シェアが75%に達しており、さらなる成長が厳しい面もありますが、非常に健闘しています。セグメント全体では引き続き成長が期待できる見通しです。 -
A2インドについては、2021年にウットラムグループへ譲渡した以降もNIPSEAグループのもとでモニタリングを続けてきたことから、2024年の買収完了後も大きな変化はありません。ただし、2023年に買い戻しを決定した以降、建築用市場では新規参入が増加し、赤字を前提としたマーケティングを行う競合他社も存在しており、防戦を強いられている部分もあります。一方で、NPIの工業用やコイルコーティング、自動車補修用、BNPAの自動車用は順調に進捗しており、インド全体としては概ね良い結果が出ています。
カザフスタンについては、PPA関連の一過性費用の計上もあり、利益率は当初の想定より低いものの、買収初年度としては順調と考えています。
質問者:ゴールドマン・サックス証券株式会社 池田篤氏
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A1第4四半期は閑散期であることや、TUCが年末に向けて債権回収期に入ることなどを踏まえても、当初はもう少し改善を見込めると考えていました。第4四半期のTUCは、販売数量こそ増加したものの、製品ミックスがマイナスとなりました。特級・1~2級都市はほぼ前期並み、もしくは若干のマイナス成長となった一方で、3~6級都市は大きく成長しており、第3四半期の成長率を上回っています。ただし、3~6級都市の利益率は特級・1~2級都市よりも低いことから、製品ミックスが全体の利益率に影響を与えました。結果として、TUCの成長率は+2%と満足できる数字ではなかったものの、厳しい事業環境下で非常に健闘したと考えています。
2025年通期の営業利益率予想については、説明資料P6にも記載の通り、2024年実績の11.1%から若干改善する見込みです。この背景としては、トレーディング事業における取引形態の変更による改善に加え、利益率の高いTUCの成長により、NIPSEA中国全体の利益率向上を見込んでいます。
工業用では、特に中国メーカー向けの販売が進展しており、必ずしもマージンが高いわけではないものの、規模の利益が取れると見込んでいます。また、TUCでは塗料事業はもとより、塗料周辺事業もチャネルを生かしてさらに拡大していく方針です。特にCCM(自動調色機)の拡充により、数量ベースでの市場シェア向上を目指しています。さらに製品ミックスの改善度合いも利益率に影響する見込みです。
塗料は消費財であるため完全な予測は困難ですが、当社の強力なブランド力を生かしつつ、塗料周辺事業をさらに拡大することによって成長していきます。 -
A2第4四半期のTUBは-18%減収と厳しい結果でしたが、チャネル拡大の取り組みを進めており、従来メインとしてきた新築住宅向けから、公共施設や政府関連プロジェクトなどへの販売を強化しています。「立邦」ブランドとして現地に根差しながら政府などとの良好な関係を築いてきており、これらの取り組みが徐々に花開くことを期待しています。
TUCについては、建築用の売上に占める特級・1~2級都市の割合が約8割を占めており、ブランド戦略などによって都市部での製品ミックスの改善を目指しています。特級・1~2級都市よりも3~6級都市の方が高い成長が続く想定ですが、3~6級都市は利益率が低いため、NIPSEA中国全体の利益率を確保するには特級・1~2級都市での成長も重要です。
また、プレミアム製品市場において競合他社の勢いが低下していることも好機と捉えており、プレミアム市場でのシェア獲得も実現できれば、十分に達成可能な利益率と考えています。
質問者:みずほ証券株式会社 吉田篤氏
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A1DGL(太平洋)における2024年通期の売上成長率は実質ベースで+4.5%程度となり、2024年に実施した小規模な事業買収の貢献も含まれています。純粋な市場成長は前年並みとなる中、2024年後半からブランド刷新などの施策を進めてきました。DuluxGroupは従来、+0~1%に留まる市場成長の中で、毎年+2~3%の製品値上げと、市場シェアの向上を通じた+2%程度の販売数量の増加により、併せて+5%程度の増収を確保してきました。こうしたトラックレコードも踏まえ、2025年も+5%程度の売上成長を見込んでいます。
営業利益率については、現在50%の市場シェアを持つ中で、売上に対して一定のマーケティング投資を継続することで、成長とポジショニングの維持を優先しています。13.3%の利益率は決して低い水準ではないことから、持続的な成長とマージンの両立を目指しています。無駄な支出を抑えつつも、市場に対して積極的に仕掛けていくことで、+5%の売上成長を達成できる見込みです。
欧州については、フランス市場が2年連続で-5%の縮小を記録するなど、成熟市場においては非常に稀な状況に陥っています。市場が反転しなくても、前期に並みにとどまってくれることを前提に、コスト削減やブランド戦略を進めることで、製品値上げと市場シェアの向上を通じた+5%の売上成長を達成していく計画です。欧州のCromologyは売上に占めるフランスの割合が6~7割を占めますが、ポルトガル、イタリア、スペインなどの市場は好調です。フランス市場が2025年に3年連続で落ち込む要因も特段見当たらないことから、市場調査会社などのデータも踏まえた売上成長を見込んでいます。 -
A2フランスでは2024年からサプライチェーン改革やブランド投資を本格的に進めています。例えば、従来はそれぞれ別の店舗で扱っていたメインブランド「ZOLPAN」と「TOLLENS」で統合を進めるなど、運営効率を高める取り組みを行っています。こうした施策による効果は市場がせめて前年並みに落ち着けば、より顕著に現れると考えています。Cromology自体はキャッシュを生み出しており、追加資金を投入する必要はない中、中長期的には2桁の営業利益率を目指しており、長い目で見ていただきたいと考えています。
質問者:Millennium Capital Management Asia Limited 藤田知未氏
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A1AOCはクロージング前となり、現時点では当局の承認がまだ1ヵ国残っている状況です。承認は近いと見通すものの、確定的なことは申し上げられない点をご理解ください。
2024年10月の買収発表時にお伝えした通年寄与ベースで15~17円のEPS貢献という数字は、取得にかかる費用や在庫のステップアップ、無形資産の償却を含めた見立てとなります。営業利益率34%という数字については無形資産の償却を含まない状態ですが、EPS貢献額は償却や金利、一過性費用を含めた上での見込みとなります。この見通しは現時点でも変わっていません。
AOCの製品は汎用品とは異なりカスタマイズされており、競合他社も少なく、安定した収益を見込むことができます。トランプ政権下で米国の景気が今後どうなるかという見立ては分かれるところですが、現時点で事業が急速に悪化しているわけではなく、むしろ現状維持もしくは良化の可能性があると感じています。ただし、米国の金利はインフラ関連の需要に影響を与える要因でもあるため、引き続き注視が必要です。
クロージングのタイミングによって2025年の連結貢献が10ヵ月分または9ヵ月分になるなどの可能性はあるものの、現時点では不確実性が高いため、具体的な影響をお伝えするのは難しい状況です。ただし、根本的な需要は底堅いと見込んでおり、EPSに対して一定のプラス貢献があると考えています。 -
A215~17円のEPS貢献は、無形資産の償却や在庫のステップアップなどを考慮した上での見立てです。AOC自体は非常に見通しやすいビジネスではあるものの、クロージングのタイミングだけは見通せない状況です。
質問者:株式会社日本経済新聞社 藤生貴子氏
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A1当社は日系自動車メーカーへの販売を強みとしていますが、例えば、中国市場ではEV化の波に日系自動車メーカーが乗り遅れている中、現地自動車メーカーの台頭が見られます。当社も中国市場でやや苦戦してきたものの、ここに来て現地自動車メーカーへの納入が増えており、第4四半期の中国自動車用は増収を確保することができました。日系自動車メーカーは引き続き当社のコアな顧客ではありますが、顧客基盤を広げる戦略を中国市場に限らずアジア全域で進めています。
また、現時点で当社連結には大きく影響しませんが、欧州ではEV化の流れを見直す動きも出てきています。当社としてはコアな顧客である日系自動車メーカーへのサービスを進化させながら、中国市場であれば現地の自動車メーカーなどへのアプローチを強化していきます。米国市場では引き続き日系自動車メーカーが主要顧客であり、米国に対して中国系のEV輸出が増加する可能性は低いと考えています。当社としては状況に応じてAgility(敏捷性)を発揮しながら、コア顧客を維持しつつ顧客基盤の裾野を広げる戦略を進めていきます。
質問者:シティグループ証券株式会社 西山祐太氏
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A1第4四半期は特に船舶用で需要が強く、収益性の改善に大きく貢献しました。また、日本事業はコスト削減に注力しており、原材料の見直しから購買方法、プロセス改善に至るまで継続的に取り組んでいます。これらの取り組みは2025年以降も継続していくことから、中長期的に営業利益率15%を目指す考えに変更はありません。
ただし、2025年はBRPの刷新費用や新技研棟の完成に伴う償却費用の発生を見込んでいます。加えて、人件費の上昇圧力や円安による輸入コストの増加も懸念されます。これらの要因に対し、価格転嫁やコスト削減で吸収できるのかどうかについて、常にせめぎ合いがある状態です。そのため、2025年通期のマージンとしては、少なくとも2024年通期の実績を維持していきたい考えです。 -
A2日本の建築用事業の社長に榎本氏が就任しました。榎本氏はこれまで船舶用事業の副社長として収益性を大幅に改善してきた立役者であり、今後は建築用事業で市場シェアの拡大と収益性の改善を目指しています。
詳細は控えますが、当社は日本の建築用市場に十分な成長機会があると見込んでおり、DXの活用も含めて意欲的に取り組んでいますので、今後の実績でお示ししていきたい考えです。
質問者:CLSA証券株式会社 張一帆氏
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A1トレーディング事業については、従来当社が製造委託先に対して原材料を購入の上、一時的に売上として計上し、製造を委託してきた販売形態を代理店モデルに変更しました。その結果、売上と仕入れを計上せず、手数料のみを収益計上することにしました。こうした変更はテクニカルなものであり、事業そのものの流れに大きな変化はありません。
第4四半期の売上収益や営業利益率については、季節性要因の影響が非常に大きいため、第4四半期だけを見ず、通年でトレンドを確認していただく必要があります。特に第4四半期は閑散期に向かう時期であり、例えばAlinaなどでは12月に向けて「店じまい感」があります。そうした中で、当社としては全体的に非常に努力してきた結果が数字に表れていると考えています。
質問者:UBS証券株式会社 大村俊太氏
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A1DuluxGroupも第4四半期の利益が想定以上に上振れた事業の1つです。必ずしもここまでの水準を想定していたわけではなく、全体的に販管費を絞った結果となります。ただし、第4四半期だけを見て判断するのではなく、説明資料P7において、2025年通期は+5%程度の売上成長を予想し、営業利益率は前年並みと見込んでいる通り、2024年通期の実績である13.3%近辺が通常であり、通年ではそれぐらいの水準を前提としています。
質問者:東洋経済新報社 山田雄大氏
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A1リスクについては、これまでも何度かご説明してきた通り、塗料の需要はGDPと密接に関連しており、例えば、米国で関税が大幅に引き上げられてGDPが低下すれば、需要にも影響が出る可能性があります。ただし、塗料需要そのものが何かに代替されることはなく、キャッシュ・フローが途絶えるリスクも基本的にはありません。オペレーショナルなリスクは全て管理可能な範囲内と考えています。私自身の一番の懸念としては、当社の潜在力や成長力が市場で正しく理解されていないことです。
インドネシアについては、第4四半期に限らず、長年にわたって高い利益率を維持しており、基本的には市場特性によるものです。国民性として製品値下げがあまり効果を持たず、むしろ過度な値下げは偽物と疑われる傾向があります。1人当たりのGDPは4,000米ドルを超える程度、人口も約2億8,000万人のインドネシアにおいて、今後さらなるプレミアム化の進展が期待できることから、当社としては引き続き市場シェアを高めていく方針であり、利益率の持続可能性は十分にあると考えています。 -
A2当社の事業は地産地消モデルであるため、基本的に関税の影響は限定的です。原材料が対象になれば影響はあるものの、それは現地の競合他社も同じ条件であるため、当社のみが不利になるわけではありません。そういう意味では、かなり世界経済からデカップルされた(切り離された)モデルであると言え、GDPや景況感などの間接的な要因の方が影響は大きいと考えています。これらがリスクの低い当社ビジネスモデルの強みとなっています。