質問者:質問者A
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A1結論から申し上げますと、共同社長体制に課題があるとは現時点では考えていません。共同社長就任時に指名委員長の原がそれぞれの役割をシンプルにお示しするため、事業会社のバックグラウンドがあるウィーは「EPSの最大化」に注力する一方、ファイナンスのバックグラウンドがある若月はM&Aや資本市場とのコミュニケーション、資金調達などを含めて、今後の「持続的なEPS積み上げ」に対する資本市場からの期待値を醸成することで、「PERの最大化」を目指す分担とご説明しました。
ご承知の通り、PERそれ自体をコントロールできるものではなく、「持続的なEPS積み上げ」に対する期待やそのトラックレコード、当社に対する信頼がPERに反映されると考えています。その上で、既存事業は持続的に成長できていることはお示しできているものの、M&Aを通じた「持続的なEPS積み上げ」についてはまだお示しできていない認識です。2023年は大規模なM&Aがありませんでしたが、決算説明会や投資家の皆様との対話において若月がご説明している通り、水面下ではさまざまな交渉を進めています。
統合報告書P27の「株価を意識した経営」で記載した通り、PER低下の背景には外部要因もあるものの、当社としてはM&Aを通じて積極的にEPSを積み上げていくことよって、インオーガニックな成長を実現し、資本市場からの期待や信頼につなげていきたい考えです。
質問者:質問者B
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A1統合報告書P27の「株価を意識した経営」で記載した通り、マクロ動向としては、2022年以降に米国で長期金利が上昇し、高バリュエーション銘柄が軒並み調整に入りました。また、中国における不動産ディベロッパーの債務不履行問題も影響したと分析しています。
業種分析としては、マクロ動向の影響によって高バリュエーション銘柄のPERが競合他社平均でもかなり下がっています。5年推移で見れば、当社のPERは依然として高い水準を維持しているものの、マクロ要因に加えて、塗料業界全体における高バリュエーション銘柄のPER低下が影響しています。
個社分析としては、株式市場において2020年まで中国関連銘柄への関心が強く、アジア合弁事業の100%化や当社株式の低流動性などが相まってPERが上昇しましたが、2021年以降はマクロ動向の影響を受けてそれが逆回転してしまっています。特に2020年ごろにPERが大きく上昇したことに対する反動もあって、PERが大きく下がってしまっている状況です。
現状のPERは複合的な要因によって形成されており、例えば米国の長期金利が下がれば、高バリュエーション銘柄が改善する可能性もありますが、当社でコントロールできるものではありません。当社としては、インオーガニックのトラックレコードを投資家の皆様へお示ししつつ、統合報告書P29「「PERの最大化」に向けた考え方」で記載したようなポイントで情報を整理しながら、皆様とのコミュニケーションの機会を設けてお伝えしていきたい考えです。 -
A2ROICに関する質問はまさに最近増えており、統合報告書P44の「若月共同社長が語る財務戦略」で解説しています。事業特性として有する高いキャッシュ創出力を活用して自社株買いを進めていけば、米国の競合他社のようにROICを高めていくことは可能であり、ROICを非常に重視する投資家の皆様にとっては受け入れられやすいストーリーと考えています。
当社としては、既存事業の成長とM&Aの両輪でEPS成長を加速することがMSVに資するとの考えであるため、結果としてM&Aに伴いのれんがバランスシートに乗ることで、過去5~10年で見るとROICは少し低下傾向にあります。ただし、ROICを重視していないわけではなく、注意深く見ています。統合報告書P45に「個社ROIC推移」を掲載していますが、買収時・買収後においてもROICを経営指標の1つとして見ており、少なくとも買収後4年程度で連結ベースのWACC(加重平均コスト)約6%を上回るような事業経営を進めています。
当社としてはM&Aを実施する過程でどうしても連結ROICは低下傾向になるものの、有望なM&A案件が多数ある中で、M&Aを実施せずに純粋な塗料会社にとどまり、EPS成長は5%程度で、生み出したキャッシュを自社株買いに充当するという選択は、株主価値を最大化するものではないと考えています。長期的な成長に貢献する事業・案件に対してキャッシュを投じていくことが、MSVの実現に必要であるとの認識です。そのため、M&Aによる価値創造を重視する当社としては、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)なども含めてROICを注視していく一方、連結ROICを最重要視するものではありません。
質問者:質問者C
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A1WACCについてはさまざまな計算方法がありますが、各種データをもとに一定の客観性を持って計算した結果を記載しています。
WACCはデット、エクイティともに加味して計算していますが、どのようにWACCを引き下げていくかについては、現時点で社内に具体的な動きがあるわけではありません。当社としてはまず、自社のWACCに対する正しい認識と資本効率を含めてしっかりと価値を生み出しているかを確認した上で、各アセットの買収後の推移を見守っている状況となります。 -
A2Scope 3を巡っては、今年度版の統合報告書で中国を含めたNIPSEAグループの大部分のデータをようやく開示することができました。Dunn-Edwardsについては、事業規模が小さいこともあり、気候変動関連データの整理などが少し遅れています。現時点で具体的にいつ開示するかは決めてはいないものの、SSBJ(サステナビリティ基準委員会)などの法定開示に間に合わせるべく、Dunn-Edwardsのメンバーと話を進めている段階です。
質問者:質問者D
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A1マクロ動向の分析については、統合報告書P27に記載の通りです。その上で、中国の事業リスクについては、投資家の皆様の中でも意見や見解が分かれていると認識しています。当社が先週面談した中国出身の投資家からは、「当社ほど中国市場でうまくオペレーションしている企業はない」「中国市場に進出している事業会社の多くが伸び悩んでいる中で、マージンを維持しながら成長し続けているのは非常に素晴らしい」との意見がありました。別のロングオンリーの投資家からは、「長年中国市場を見てきたが、素晴らしいオペレーションを実践している」との評価も受けています。
確かに四半期単位での売上成長率にはブレがあるものの、年間ベースの成長実績を振り返る限り、業績変動リスクがそこまであるとは認識していません。また、これから中古住宅の塗り替え需要が増えてくれば、よりいっそう新築住宅市場との連動性は低下してくるし、市場シェアがさらに向上してドミナンスが進めばさらに事業は安定してくると見込んでいます。
当社はオーガニック、インオーガニックの両面で「持続的なEPS積み上げ」を目指す中、共同社長の若月が以前にもご説明した通り、当社は大きなリスクを取りながら派手なM&Aを進めていく会社ではなく、事業リスクを抑え、安定的なキャッシュ・利益を積み上げていく慎重な経営スタイルです。したがって、M&Aにおいても、市況に左右されにくく業績変動リスクが少ない、キャッシュを安定的に創出できて、バリエーションの低い案件の獲得を志向しています。
Cromologyについては、現時点でうまくいっているとは明言しづらいものの、年間ベースで赤字に陥っているわけではなく、資本の再注入をしているわけではありません。現地で市場シェアも向上できているとの認識もあり、どの水準まで到達すると成功や失敗の判断になるのかは、今後皆様とディスカッションさせていただければと考えています。
中国事業は今後も引き続き成長すると見込んでいますが、M&Aを継続していくことで、結果として連結売上収益に占める中国事業の割合は低下していく可能性があります。中国事業の比率を引き下げる意思はないものの、「アセット・アセンブラー」モデルを追求していくことで各地域・事業の構成比は変わっていく見込みです。
当社は今後もオーガニック、インオーガニックの両面で、事業リスクが低く、キャッシュが安定的に創出されて、EPSが持続的に積み上がる経営スタイルを追求していきたい考えです。 -
A22019年以降の経営体制で実施した案件で減損を余儀なくされたケースはありません。ただし、欧州Cromologyの買収など、当初想定に対して進捗が芳しくない案件も少なからず存在していることから、ご指摘の通り、少し掘り下げて紹介する価値はあるかと考えています。
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A3投資家の皆様との認識ギャップが埋まる企画を今後も検討していきます。
質問者:質問者E
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A1統合報告書では、設備投資などの固定費負担が比較的軽い事業特性ゆえにレバレッジ効果は出やすく、事業をしっかり回してトップラインが成長すれば、基本的にはマージンも改善しやすい特徴があることをお示ししました。その上で、当社としては、超過マージン分をさらなる成長に向けたマーケティング活動などへ戦略的に回しています。トップラインの成長を比較的重要視しており、将来的に市場でドミナンス化することができれば、いずれマージンは返ってくると見込んでいます。
その最たる事例が、米国最大の競合他社であり、50%以上の市場シェア有するプライスリーダーとして、マージンが年々上がっています。
つい先日の投資家面談でも、「貴社中国事業もシェアNo.1なのだから、米国の競合他社のようにさらに製品値上げし、マージンを享受すべきではないか?」との質問が寄せられました。当社としては、中国市場でシェア1位ではあるものの、その割合は25%にとどまっており、現時点ではドミナンスに達していないと認識しています。
1つの目安としては、シェアが50~60%程度に達すればドミナンスと言えるのではないかと考えています。しかし、地域によってドミナンスの考え方は当然異なってくるため、50~60%程度のシェアを獲得すれば価格を自由にコントロールできてマージンを享受しやすい地域もあれば、そうでない地域もあります。最終的なドミナンス化を中長期で目指しながら、その過程で税前利益を確実に増やし、マージンも慎重に管理していくのが、当社の考え方となります。