質問者:SMBC日興証券株式会社 新谷泰大氏
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A1現在の中国市場は製品値上げを行うような局面ではないため、実施していません。TUCの+5%増収の内訳としては、販売数量の増加がけん引しており、価格/ミックスは、競合他社の状況を踏まえた一部エコノミー製品の値下げによりマイナスとなりました。
TUCにおける都市部と地方都市の状況については、特級、1~2級都市の売上構成比の方が高いものの、売上成長率では3~6級都市の方が高くなっています。
木工塗料や香港・台湾事業、原材料販売などを含む「その他」について、TUC・TUB・「その他」の売上構成比は、従来から大きく変化はないものの、「その他」の売上が大きく成長しており、価格/ミックスにネガティブな影響を多少与えています。しかし、NIPSEA中国の汎用事業全体のマージンは非常に健全であることから、プレミアム製品の価格維持などにより、成長と収益の両立ができていると考えています。 -
A2「その他」については、市場の需給に左右される要素もあるため、中国汎用事業の中心であるTUCとTUBで成長を目指していきます。
TUCの第1四半期は、前期に+19%増収した上で今期も+15%増収を実現しており、第2四半期は、前年に+15%増収した上で今期も市場成長がほぼゼロの状況下で+5%増収を達成するなど非常に健闘しており、通期においても+10~15%増収の達成を目指していきます。
質問者:BofA証券株式会社 榎本尚志氏
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A1季節性としては上期よりも下期がやや良いですが、為替の状況に加え、インド2事業のクロージングの遅延に伴う新規連結影響の剥落が影響しており、想定以上に減益を見込んでいるわけではありません。
説明資料P5-6に記載の通り、通期業績予想はほとんどの地域で前年比プラス成長(現地通貨ベース)を見通す中、下期も同様にほとんどの地域でプラス成長を見込んでおり、事業の状況は悪くありません。
為替については、2月発表の予想では円/米ドルが141.2円に対して上期実績は154.1円だったものの、直近では142円まで円高が進んだことから、当社の為替感応度や他社の状況なども踏まえた上で、今回は通期業績予想の修正を行いませんでした。
質問者:シティグループ証券株式会社 西山祐太氏
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A1基本的には原材料価格の影響が大きな要因です。現時点では、原材料価格は安定、もしくは原材料費率の若干の低下を一部で見通しています。
地域差はありますが、例えばNIPSEA中国では原材料価格が落ち着いた分を完全に利益へ反映できるような状況ではないため、製品ミックスあるいは製品値下げで対応しています。その中でも販売数量は伸びており、一定のオペレーティング・レバレッジが効く中で、全体的には利益率は期初想定より良くなる見通しです。
トルコについては、高金利とインフレに伴う固定費の上昇もある中、超インフレ会計の適用など、依然として不透明な状況にあります。そのため、トルコの営業利益率の見通しは期初想定より厳しく見込んでいます。第2四半期も厳しい結果でしたが、それでも2桁の営業利益率となる見通しです。
インドネシアについては、売上が伸び悩むも、固定費率が元々低いため、利益率は30%を超えています。売上が想定よりも伸び悩む中で固定費率が若干増加し、経済環境の悪化懸念もある中で、2023年の営業利益率32.9%に対してはやや低下する見通しですが、30%は超える見込みです。
全体としては、コストコントロールと数量回復に向けた努力により、期初ガイダンスは達成できる見込みです。
質問者:ゴールドマン・サックス証券株式会社 池田篤氏
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A1競合他社の動向に関わらず、業界再編の可能性に関しては、当社は以前より一部の小規模な企業をOEM先としてグループ傘下へ取り込む戦略を進めています。そのため、資本を使った買収は現在考えていません。
海外の競合他社が別の競合他社の中国事業を買収するなどの動きはあるものの、当社が同じように資本を使い、競合他社を買収することは別次元の検討が必要であり、現時点では可能性は低いです。
製品値上げについては情報元が分かりかねますが、当社はプレミアム製品の一部では値下げをやや抑制しています。NIPSEA中国の第2四半期の営業利益率は短信ベースで12%であり、TUCはさらに高い水準です。当社は特定の利益率を目標としておらず、地域や事業の特性を考慮しながら、最適な利益率を追求しています。中国現地としては成長と収益の双方が重要であり、それらを両立させることが「株主価値最大化(MSV)」につながると考えています。市場が振るわないのであれば、いたずらに宣伝や製品値下げを実施するよりも収益性を重視していく一方で、成長も諦めず、双方のバランスを取りながら戦略を進めています。このバランスを上手く取れていることが当社の強みです。 -
A2製品値下げを抑制することはありますが、値上げする局面ではありません。値上げが可能な環境は、原材料価格が上昇している、あるいは市場が活況なタイミングです。当社としては、現状消費者信頼感は結構厳しいと感じています。しかし、塗料は必需品として需要が根強く、一部のプレミアム製品においては以前より値下げせずに販売しています。値下げの抑制を値上げと認識されている方もいるかも知れません。
質問者:みずほ証券株式会社 吉田篤氏
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A1太平洋と欧州では様相は異なります。太平洋市場は成長がほぼ横ばいの中、買収前はインフレやシェア獲得により年平均+5%成長していたのに対して、買収後は当社の資本力を活用しながら買収を重ね、+8%程度の成長を達成しています。ただし、これは市況とのバランスであり、例えば、コロナ禍は一時的に小売り向けで売上が好調だったものの、その後は反動がありました。
太平洋では2024年通期で+5~10%の売上成長を目指す中、第2四半期は+4%の売上成長となりましたが、通期目標の実現はほぼ心配ありません。太平洋は立て直しではなく、10年ぶりに基幹ブランドをリニューアルし、プロモーションを行うなどにより、さらなる成長を目指しています。
コストを絞り、オペレーティング・レバレッジを効かせることも可能ですが、売上の一定割合をマーケティング活動に投資することで、DuluxGroupのプレミアムブランド化を実現しています。原材料費率が他の地域と比べて低い分、販管費率は高いものの、健全な成長によって少なくともマージンが維持できれば、通期目標は問題なく達成できると考えています。
欧州については、プロ向けにおけるシェア向上と、小売り向けにおけるプレゼンス構築を進める中で、市況が2年連続で軟化傾向にあるのは過去に経験がなく、成熟した市場においては稀有な例と認識しています。ウクライナ戦争などを要因とした欧州全体の景気悪化ではあるものの、こうした傾向はいつまでも継続しないと考えています。市況が落ち着き、回復傾向へ転換する中で、フランスにおいて現在2位の市場シェアを1位へ引き上げるべく、効率化と拡販に取り組んでいきます。
したがって、少々時間がかかる可能性はあるものの、キャッシュの創出は充分できているため、追加の資金注入の必要はありません。一部サプライチェーンの改善にも取り組んでおり、マージンの改善と成長軌道への回帰を目指していきます。 -
A2通常の範囲内です。DuluxGroupは自身をマーケティング会社であると位置付けており、その前提でコスト管理しているため、高額なコストがかかる想定はしていません。
なお、短信ベースでの前年対比では、2023年は一過性項目として2022年の洪水に係る損益があり、その影響もあります。実質ベースではあまり成長していないとのご指摘はその通りですが、マイナスな状況ではないことを付け加えます。
質問者: CLSA 証券株式会社 張一帆氏
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A1おっしゃる通り、市況は決して良いとは言えず、日本の一部の原材料価格は上昇傾向にあり、人件費なども含めて全体的にインフレ傾向にあると認識しています。世界的にも同様の状況下で、顧客の理解を得ながら製品値上げを実行しています。コスト管理についても、これまでと同様に分社化によるコスト構造の肥大化や機能の重複などの課題に対処するべく、構造改革を実施しています。第2四半期は堅調と評価いただきましたが、当社の目標はより高いところにあり、もう一段成長できるよう現地マネジメントが努力しています。
加えて、船舶用については市況も比較的良好な中、当社は海外事業も含まれていることから為替影響も含まれているものの、特に海外事業の収益性が向上していることも貢献要因の1つです。日本グループでの構成比は小さいものの、数年前と比べてかなり改善が進んでいます。 -
A2説明資料P8のヒートマップに記載の通り、日本の自動車市場は前年比ほぼ横ばいの見通しです。影響はない見込みですが、不確実性も少なくないため、現時点ではそれ以上のコメントは差し控えます。
質問者:株式会社日本経済新聞社 藤生貴子氏
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A1基本的な考え方に変更はありません。
日本銀行の金利政策について副総裁が少し緩和的な発言をしましたが、金利が急激に3%や4%、5%に上昇するとは考えにくいため、当社の資金調達力の優位性は変わらないと考えています。また、銀行の流動性に関する意識の変化があれば、貸し出し姿勢も変わる可能性がありますが、現時点ではそのような状況ではないため、銀行の健全性が変わらない限り、当社の優位性も変わらないと考えています。
一方で、対象企業のバリュエーションは株価の乱高下によって変動するため、バリュエーションの高い企業は買収しない方針としています。また、円高と円安のどちらが有利かについては、買収時は円高の方が有利ですが、為替が一方向に進んでしまうことは良くないと考えています。当社の財務諸表における為替感応度を考慮しながら、慎重にファイナンスを進めていく予定です。 -
A2通常、米ドルで買収する企業は、米ドル建てのキャッシュ・フローが減少し、創出されるキャッシュ・フローも変動するため、あくまで現地のキャッシュ・フローに対してどの程度かという相対的な話となります。そのため、当社としてはそれ自体に対する方針は持っていません。創出された米ドルのキャッシュ・フローを円に換算して返済に充てることもないため、基本的には現地通貨でキャッシュを積極的に積み立てる中で、ネット・デットを管理しています。
ただし、金利が上昇すれば円建てで返済した方が有利になる可能性もあり、グロスのデットを減らすことにもなり得ると考えます。この点については、検討している事項もありますが、あくまで買収そのものの是非が為替の乱高下によって大きく変わるわけではないと考えています。
質問者:野村證券株式会社 岡嵜茂樹氏
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A1NIPSEA中国のTUCについては、市場環境は決して良好ではなく、好転する前提も持っていませんでした。塗料は消費財であるため、市況が読みづらい側面があります。市場の前提が大きく変わったというよりも、厳しい市場環境の中でも+5%増収を達成し、加えてシェアを拡大しながらマージンも確保できたと評価していますが、市場全体は引き続き楽観できる状況ではないと考えています。こうした状況下、下期においても収益と成長をしっかりと両立していきます。上期の売上成長率は+10%程度であり、2024年通期では+10~15%を見込んでいるため、下期においては第2四半期よりも高い成長を目指していきます。
インドネシアにおいては、第1四半期は休日や大統領選挙の影響もあり、成長が滞った一方、第2四半期は若干の改善が見て取れたものの、依然として伸び悩んでいる状況です。この背景には、インドネシアの経済状況が想定よりあまり良くないことがあり、オンラインギャンブルなどの社会問題も含めて停滞感が強いと言えます。しかし、第3四半期や第4四半期には、さまざまな施策を講じてシェアを拡大していく計画です。7月も好調な滑り出しであり、全体的にはあまり心配していません。インドネシアの現地競合他社との比較については、第2四半期において競合他社が減収だったことから、大きく水をあけられているとは考えていません。